インドネシア コーヒーとコピルアック


2012.12.17

業務上いろいろな国の貿易事情を見ることがあります。

 

例えば洋服をアメリカに輸出したいと思います。おそらく何の苦労もなくアメリカで通関されるでしょう。ところが同じ洋服であったとしてもインドネシアでは輸入者がライセンスを取得していないと通関できません。

 

逆にインドネシアからある食料品をアメリカに輸出するとします。アメリカでは問題なく通関できたものが、日本ではいくつかの規制に引っ掛かり通関できないというケースもあり得ます。

 

貿易業務にはその国の政策や規制が複雑に絡み合い、それを理解しないまま業務を進めてしまうと後で失敗することになります。そこには意外なところに落とし穴があるケースもあります。

 

今から10年以上前だったと思います。私の知人が中国に工業用部品を輸出しようとしました。試作で使用するために数量は少なく、ミカン箱サイズの段ボールに詰め出荷しました。もちろん事前に乙仲業者に輸入が問題ないかどうかを確認済みの案件です。

 

ところがこの荷物は税関で止められてしまいました。理由は税関職員が段ボールを開けたところ、緩衝材が新聞紙だったからです。当時中国では海外から入る情報規制が厳しく、緩衝材で使用する新聞紙でさえその対象になっていました。つまり「違法に海外から情報を入手しようとした」と見做されたわけです。

 

さすがに乙仲業者も「緩衝材に新聞紙は使ってはいけない」ということは知らなかったようです。

 

おおかたの場合何かを「輸入」する場合このような事態になるケースがしばしばあります。特に初めて何かを他国に輸入しようとする場合には、輸入国の税関事情について現地のエージェントや乙仲業者から綿密に情報収集する必要があります。その為、たいがい荷主から依頼された彼らは、かなり力を入れて情報収集を行います。「はたして荷主の貨物は輸入できるのか?」と。

 

ところがインドネシアで貿易業務をしている際に思うのは「輸出」も非常に気を付ける必要があることです。

 

例えば日本から何かを輸出する場合、相手国で輸入が出来ることが判明すれば基本的に輸出で何か問題になることはあまりありません。もちろん液体や危険物、国際的に明らかに規制対象になっているものは除きますが、輸出時にストップがかかることはまれでしょう。

 

輸出は国益にもなるわけでありますので、感覚としては「どうぞ行ってらっしゃいませ!!」というところではないでしょうか。

 

しかしインドネシアでは意外なものに「輸出」に規制がかかっている場合があり、それを知らないとインドネシアからものを出せないという事態に陥ります。弊社が陥ったピンチはコーヒー生豆の輸出でした。

 

弊社、LJA JAPANとLJAインドネシアではコピルアックというインドネシア特産のコーヒー生豆を精製し日本に輸出すビジネスを行っております。このコピルアックというコーヒーですが、おそらくご存じの方もいらっしゃるかと思いますが簡単に説明をいたします。

 

今から200年以上前、まだインドネシアがオランダ統治下にあった頃、インドネシアではコーヒーの強制栽培がおこなわれておりました。ほぼ全量がオランダへ輸出するためのもので、それがインドネシアの国内市場に出回ることはありませんでした。

 

さらに当時のインドネシアではインドネシア人がコーヒーを飲むことを完全に禁止しておりました。仮にこの禁を破った場合、その人は死刑に処せられたという話を聞いています。

 

そのため彼らはコーヒーを飲みたくても飲むことが出来ない状況であったのですが、ある方法でコーヒーを飲んでいました。

 

ところで、インドネシアにはLuwak(ルワック)という生物が森に生息しております。このLuwak、日本ではジャコウネコと呼ばれているのですがネコ科の動物ではないようです。見た目は狸に多少似ております。

 

この動物の特徴は夜行性であること、そしてコーヒーの実を食べることです。Luwakがコーヒーの実を食べた後、コーヒーの実は消化されず豆の状態でフンと一緒に出てきます。コーヒー生豆はパーチメントと呼ばれる厚い外皮に覆われているため、Luwakの胃では消化が出来ないのです。

 

いつの頃からかオランダ統治下にあったインドネシアでは、このLuwakがフンとして落としたコーヒー豆をよく洗い、そして精製し焙煎して飲んでいました。オランダ人もこの方法だったら見逃してくれるだろうと考えたのです。

 

これがKopi Luwak(コピルアック)といわれるインドネシア特産品のコーヒーになります。味にも特徴があり、その希少性から高級コーヒーとして世界中で、高値で取引されております。

 

このコピルアック、インドネシア国内の生豆の1キロ当たりの単価はおおよそRp800.000~1.000.000(日本円で約6,000~10,000円)。普通のロブスタ豆のインドネシアの市場価格がおおよそ1キロ当たりRp25.000(約250円)であるため、なんと30倍以上の価格で取引されていることになります。

 

弊社はこのコピルアック生豆をインドネシアから日本に輸出しているわけです。最初このビジネスを始める際に貿易業務上、最も気がかりだったのは「日本に輸入できるのか?」でした。コーヒー豆とはいえジャコウネコのフンを精製し得られたものです。

 

日本の通関は食品に関してはオーストラリアと並び世界でも有数の厳しさと聞いています。まずはインドネシアから日本に問い合わせをすることからスタートいたしました。「ジャコウネコのフンから得られたコーヒー豆なのですが日本の通関で問題になりませんか?」と。

 

 

 

これがLuwak(ルワック)です。弊社はJeparaの業者と取引があり、ここでLuwakは飼育されています。

 

続きは長くなりますので次回をお楽しみください。

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Koki