インドネシア 小売りの現場 PasarのBalsam販売


2013.1.09

昨日の日経新聞1面でファミリーマートのインドネシア進出の記事が掲載されていました。まずはジャカルタからの進出のようですが、やはりPatiとジャカルタは違うなと感ずるものがあります。

 

まずは焼き鳥1本の値段です。ジャカルタでは約40円のようですが、Patiではそもそも焼き鳥を1本という単位では販売していません。仮に販売していたとしても10円程度だと思います。Sate Ayam(インドネシア版焼き鳥)のWarung(ワルン=屋台)というのがPatiにもありますが、結構味は美味しいです。

 

また、コメントで「地元の小売店よりもコンビニのほうが人気がある」と書かれていますが、まだPatiでは市民がコンビニを活用する機会はそれほど多くなく、やはり以前ここで書きましたToko Kecil(小売店)やPasar(市場)が庶民の生活には欠かすことは出来ません。

 

しかしこの波はいずれPatiにもやってくるのでしょう。Toko KecilへデリバリーをするDistribusiやPasarで買い付けをするToko Kecilの人々がコンビニにより淘汰されてしまうと思うと少しさみしくなります。

 

ところで、私が貿易業をインドネシアで始める前は、Balsamという塗り薬をPati近郊のPasarで売り歩いていました。インドネシアで起業をした最初の仕事はBalsamの製造販売だったのです。詳細はこちらをご覧いただければと思います(Koki’s Kopi Luwakというコピルアックに関するブログへ飛びます)。

 

私がBalsamをPasarで売り歩く際は段ボールにBalsamを入れて道行く人やPasar内で商売をしている人に「うちのBalsamを試してみませんか?」という徒歩営業をしておりました。試してみたいという人はその場で試供品をつけてもらい、良ければ購入します。1個Rp5.000(約50円)程度の製品ですので敷居は高くない金額ではあります。

 

Pasarの人手のピークはだいたい午前中で、午後は閑散としてしまいます。そのため我々がPasarでBalsamを販売するのは午前中の半日だけでしたが、おおよそ半日で販売するBalsamがだいたい50個程度。Pasarの中にある薬局店が1ダース単位で購入してもらえれば、100個近く売れる場合もあります。

 

Pasarの中にある商店とのビジネスの基本は「委託販売」です。つまり商品は置いてもらいますが、代金は売れた分だけ回収という仕組みです。これを支えるのがこの章でできたようにDistribusiの役目でもあり、彼らは配達も行いますが、配達時に在庫のチェックと売れた分の代金を店から回収します。

 

もちろんこのシステムが絶対ではありません。「買い取ってくれたら安くする」という交渉も当然あります。PasarでBalsamを販売していた際には私も基本的には買い取りをお願いしていました。成功する場合もあり、失敗する場合もあり、といったところでした。

 

さてある日のこと、RembangというPatiから少し離れた街のPasarでBalsamを販売していた時のことです。ある女性が我々に声をかけてきました。Pasarで買い物をしているToko Kecilのマダムといった風情です。「アンタ、ちょっと試してみていいかい?」と。試供品を彼女に渡し、彼女が腕に塗ってみたところ「いいね!」とのありがたいご評価をいただきました。

 

「1ダース買うけど負けてくんないかい?」ということでしたので、1ダース買い取ってくれれば割り引きますという交渉が成立したのであります。おそらく地元に帰って自分のToko Kecilで販売するのだろうな、とあまり気にしていなかったのですが10分後くらいにまた彼女が我々のもとにやってきました。「もう1ダースおくれ」と。

 

1ダース購入していただけるお客様というのは実は結構ありがたく、たいていは「委託じゃないと買わない」という風になります。彼女は合計2ダースを現金で購入してくれたことになります。

 

ところがさらに30分くらいしてまた彼女が我々のところにやってきました「アンタ、どこ行ってたんだい? 探してたんだよ。今度は2ダースおくれよ」と。

 

今までにないパターンでした。最初はただ「追加で購入していただいた」としか思わなかったのですが、様子が違います。そこで彼女に聞いてみました。「奥さん薬屋さんですか?」と。しかし彼女のコメントに驚きました「違うよ。もうさっきのやつなくなったんだよ!」

 

「なくなった??」。最初は意味が分かりませんでした。このわずか1時間の間に2ダースを販売したことになります。てっきり自分のToko(店)で販売するために購入していただいたとばかり思っていたのですが、どうやら違うようです。

 

とても気になりました。この短時間でそんなにBalsamが売れるはずがないからです。そして非常に嫌な予感がしました。以前インドネシアでは「Balsamを食べる人がいる」という話を聞いたことがあるからです。

 

Balsamは化学薬品で出来た塗り薬です。まさにメンソレータムやタイガーバームと同じようなものです。しかしそれを食べる人がインドネシアには存在するのです。

 

「まさかこのマダム、Warungで食後のコーヒーじゃなく、“食後のBalsam”を販売してるんじゃないか?」

 

たくさん自分のBalsamを買ってくれるのはありがたいのですが、Balsamの製造方法や成分を知っている私からすれば、食用として使用することはとても勧められたものではありません。いくらBalsamを食べるびっくり人間の味覚にヒットしたとしてもそれはマズイというものです。ホントに食べるのか?

 

好奇心には抗うことが出来ず、2ダースのBalsamを買い物かごに押し込み去ってゆく彼女の後をついてゆくことにしました。

 

次回、2ダースのBalsamの行方をお伝えいたします。

 

 

私がPasarでBalsamを販売していた時の写真です。Patiの近郊にあるRuntingというPasarでの写真です。腰につけたバッグの中にBalsam販売で得た札束がたくさん入っています。

 

Sampai

Jumpa Lagi,

Koki