インドネシア Pasarのマダムの正体は??


2013.2.19

たぶん今から20年位前だと思いますが、“ちびまるこちゃん”の著者さくらももこ氏のエッセー集「もものかんづめ」を読みました。

 

その中で氏が「飲尿療法」をやっているとの記述があり驚愕した覚えがあります。それまで飲尿とは何かを知らず、この本で初めて何たるかを知りました。よくそんなことできるな・・・・・。自分のオシッコを喜んで飲むなんて奇人変人じゃないか?

 

当然の感想ですが時と場所を超え、ここインドネシアにもいろいろな奇人変人はいるようです。“Balsamを食べる男”といえば「あ~その人テレビで見た!!」という人はちらほらいます。Balsamとは先般のこのブログで出てきた、あのメンソレータムやタイガーバームのようなあの塗り薬です。あれを食べるわけです。

 

ところでこのBalsam、例えば日本でこれを使うとしたらおそらく切り傷が出来た時や、指の皮がサカムケした際などに利用するくらいで、1人が1年間に使う量というのはたかが知れています。

 

ところがインドネシアでは結構な人がこのBalsamという薬を消費しています。例えば子供が風邪を引いたときは胸にBalsamを塗ります。また肩こり、腰痛の際にもBalsamを使います。インドネシア人の年間Balsam使用量は日本人の10倍は軽く超えているでしょう。しかも人口は日本の約2倍です。そのため日本とは比較にならないくらいの巨大Balsamマーケットが存在するわけです。

 

この巨大マーケットに参入した私、自分で製造したBalsamをPati近郊のPasarで手売りしていたわけなのですが、さて先般のブログの続きをお話ししたいと思います。私のBalsamをわずか数十分の間に4ダース購入してくれた、RembangにあるPasarで出会ったマダムの話です。

 

通常PasarでBalsamを販売していれば半日で50個販売できればまずまずといったところです。ところがわずか数十分の間に4ダース、すなわち48個とはかなりの数量を購入していただいたことになります。ところが、彼女がそれを自分のToko Kecil(小さい店)などで販売する為の在庫として購入したというのでしたら理解できるのですが、彼女はPasarの中で2ダースをわずか数十分で販売し、追加で2ダースを購入したわけです。

 

「食用で販売しているのか?」

 

びっくり人間がBalsamを舐める図が容易に頭に思い浮かびました。Balsamの製造方法や成分を知っている私からすれば、食べたり舐めたりするのはやめたほうがいいと進んで忠告します。

 

いずれにしても彼女の購入スピードは特異だったため気になり後をついてゆくことにしたのであります。

 

Pasarの中には、「商品を売るToko(店)」、「Pasar内の地べたで商品を売る人」、「Pasarに買い物に来た買い物客」の3種類の人がいます。マダムの行動を見ていると買い物客には何の関心も示しません。彼女が話しかけるのは「地べたで商品を売る人」です。

 

このマダム、製品の一つを試供品として潰しており、それを渡し、「試してみなよ」と勧めているようです。勧められた人は自分の首辺りにBalsamを塗ってみて「いいね」とか言っています。そしてそのまま購入しました。

 

そこまでは普通の光景です。試供品を試してもらい良ければ購入。気に入らなければ購入しない。そしてこのマダム、隣に座っている商人にも同じような行動をとります。そして購入・・・・。また、PasarにあるTokoの中にも入ってゆき店の人にも同じようにBalsamを販売しています。

 

これを繰り返すわけですが、驚くことにその購入率というのはかなりの高確率です。ざっと見たところ50%近くが彼女に勧められてBalsamを購入しています。「どんな営業トークを使ってるんだ?まさか食べることもできるとか言ってるんじゃないだろうな!?」。本気で心配しました。

 

ところが彼女の行動を見てゆく中で一つ気が付くことがあります。ノートに何かメモをしながら商品を売っているのです。またはメモを見ながらBalsamを売っています。そしてたまにお金を受け取らないケースもあります。

 

お金を受け取る、受け取らないは彼女の自由ですが、やけに長い時間ノートを見ながら販売しているのが特徴的でした。誰に何を販売したかノートにメモするのは分かるのですが、それにしても“販売する前”に何かしばらくの間ノートを見ているのが気がかりです。結局彼女は1時間くらいの間に2ダースを販売し、再度私から1ダースを購入しました。

 

いずれにしてもこの販売のスピードは異常です。魔法の営業トークを使わない限りこんな短時間で商品を販売することは不可能でしょう。本気で彼女を私のBalsam販売要員にスカウトしようかと思ったくらいです。

 

そこでPasarで売っているジュースを彼女にご馳走しながら尋ねてみました「どんな営業トークを使っているのですか?」と。ところが彼女の答えは“Biasa”(普通だよ)とのこと。そこで質問を変えてみることにしました。「あのメモには何が書いてあるのですか? 売る前にメモを見てから販売していましたね」。

 

「あ~あれかい、あれは前のツケがあるかどうかを見てるんだよ」とのこと。

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ツケ??

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そうなのです、彼女は全て“ツケ”でBalsamを販売していたのです。そのため彼女のノートには何月何日に何を売ったのかがびっしり記載されており、お客様に販売する前に、前のツケが何かあるかどうかをチェックしているのです。

 

お客さんにツケがあれば以前のツケの代金の回収をしていたのであります。つまり、彼女が受け取っていたお金はBalsamを売った代金ではなく、以前のツケの代金を回収しているだけだったのです。

 

バルサムを食用として販売しているのではなくて安心しました・・・・。

 

しかしこのマダムの行動からインドネシア人の特徴の一つを読み取ることが出来ます。

 

ツケで買う。

 

次回少しこの話を記載したいと思います。

 

Sampai Jumpa Lagi,[full][/full]

Koki