2012.12.15
インドネシアが錫(スズ)の主要産出国というのを先日の日経新聞を読み初めて知りました。世界の産出量のおおよそ半分はインドネシア産とのこと。インドネシア政府の錫採掘規制により輸出量が減り錫の国際相場が上昇しているということです。
錫といえばすぐに思い浮かべるのが「ハンダ」です。あのハンダごてを当てて溶かす合金のハンダのことです。このハンダの中には錫、銅、鉛などの金属が使用されています。錫が値上がりするということは、すなわちハンダの価格も上昇するのではないかと思ったのであります。
以前私は工業分野に身を置いていた関係で、原料の値上げというのは非常に厄介な問題だというのは良くわかります。例えば同じ日経新聞にパナソニックの苦戦に関する連載記事を見ましたが今、日本の大手の家電メーカーは経営の問題で大変な時期のはずです。こういった会社に「錫の値段が上がったのでハンダの値段を上げてください」とお願いするわけです。
もちろん錫の値段が現在上昇に基調にあるからといってすぐに値上げをすることはないでしょう。錫を利用した工業製品を製造しているメーカーは在庫も確保してあるはずですし、円高になれば値上げの影響は相殺されるかもしれません。
いずれにしてもパナソニックだけではなく、ほとんどの日本の家電メーカーが苦戦をしている中で、こういった原材料の値上げというのは誰にとっても喜ばしいことはありません。
ただし、反対の見方をすれば国内の錫製品の需要は4~5年前と比べると大きく落ち込んでいるはずです。錫の大口需要家の供給先が家電メーカーだとすれば、産業全体に与える影響も以前ほどは大きくないのではないかと思います。
いまこのブログを書きながら12~3年前の原材料相場のことを思い出しました。例えば塩酸や苛性ソーダなど工業分野では必要不可欠な原材料価格が徐々にアップしてゆきました。原因は今までそういった原材料の輸出国であった中国が、輸入国のポジションに変わってきたからです。
今から思えば2000年近辺はおそらく日本の家電メーカー衰退の始まりだったのかもしれません。この頃から中国での家電製品およびガジェットなどに使用される精密部品の供給能力が徐々に増してきました。今までは日本でしか生産できなかった製品や部品も中国で同等品が安価で生産可能な状況になったのもちょうどこの頃からだったと思います。
一方それは中国からしてみれば成功の始まりだったのでしょう。今や世界の工場の代名詞の通りMade in Chinaを見ない国はないのではないでしょうか。もちろんインドネシアでもMade in Chinaはあふれかえっております。
ところで最近よく考えるのは、今日のインドネシアの錫採掘規制による輸出減や昨今のAPIはNIKの輸出入にかかわる貿易規制の強化に関して、インドネシアが何を狙ってそうしているのか?ということです。
錫採掘規制は供給量を抑えて価格を上げ、輸出による収入を増やそうとしているのかもしれません。この政策は理解できます。しかし、先般このブログで記載したような輸出入の規制をこれほど厳しくする本当の原因がいまいちわからないというのが正直なところです。
確かにAPI-Uを廃止して1社=1品目の輸入制限を設ければ安価なMade in China製品はインドネシアに輸入しづらくなるでしょう。しかしその前提にあるのは「国内産業の育成と保護」であるはずです。安価な輸入品はその妨げになるのは明白でしょう。
ところがインドネシアが政府として何か国内産業を発展、保護させるような方向性を示しているような気はあまりしないのであります。
いずれにしても中国のように国を挙げて輸出型製造業を発展させるという方向性に行きそうにないのが面白いところだと思います。
LJAインドネシアがある中部ジャワでは製造業はあまり盛んではありませんが、いずれこの地方の製造業についても経験談をブログに書いてまいりたいと思います。
Juwanaで撮影した鋳型と呼ばれる金属成形用の型です。バイクの部品を製造しています。Patiの隣町Juwanaは漁業としても有名な町ですが、実は金属加工の工場もいくつかあります。漁業が盛んなため、昔は船のスクリューをこの街で製造していたとのことです。その名残で今も金属加工を生業にしている人々がまだこの街にはいます。
Sampai Jumpa Lagi,
Koki