2012.11.20
私の知り合いで新潟県出身の人がいました。年齢は70歳くらいです。4~5年くらい前、彼から柏崎刈羽原発に関する話を聞いたことがあります。
この原発を誘致する政治的な経緯についてでした。詳細は省きますが、一つの大型インフラを整備するということは、副次的に様々な雇用を生み出す結果となるという典型的な例を聞くことが出来ました。
その一つが道路工事です。この原発付近の道というのは普通の道路ではあるものの、やたらに道路が多いそうです。通常なら絶対に道路など作らないようなところにも、網の目のように道路を作る計画がスタートしたそうです。
何のためにこの道路があるかというと、避難用の為ということです。つまり事故が発生した場合を想定し、避難を迅速に行うことが出来るよう、相当数の道路が原発の建設により新たに生まれたことになります。
これによりかなり雇用が確保されたという話を聞きました。もちろん大型のインフラ案件は政治的な決断が必要になる場合がほとんどでしょう。この決断で浮かばれる人、そうでない人が出てきます。
事情は日本だけではなくインドネシアでも同じです。そして選挙期間中のPati県もまたにぎやかに街宣活動が繰り広げられます。
以前この章でご紹介をした、カブール氏。私が以前住んでいたLuboyo村で友人になった彼。押しの強い政治好きなPatiの役場に勤務するお役人です。
実は彼の妹が、Patiの県知事選に立候補していたのであります。先般お話しいたしました通り、インドネシアでは知事選の際に県知事と副県知事がペアーで立候補します。彼女は副県知事としての立候補です。
彼女の年齢は40代半ば~後半くらい。知人の話によると、若いころは村一番の美人で、Patiの警察のお偉いさんと結婚したとのこと。わたしも何度か会ったことがあるのですが、本当にあの人相があまりよろしくないカブール氏の兄妹か?と思うくらい器量よしで、物腰の柔らかい女性です。
この兄妹、それぞれに結婚はしているものの家は隣同士です。日本では兄弟姉妹が結婚した後も隣に住むというのはあまりないことですが、こちらでは珍しくはありません。
知人に「仲がいいんですね」という話をしたところ、実は全く逆とのこと。
この兄妹、近隣の村では知らぬ者がいないくらい有名な犬猿兄妹だそうで、妹が警察のお偉いさんと結婚し、大金持ちになった為、兄への見せしめとしてわざわざ隣に大豪邸を建てたともっぱらの噂です。
このうわさが本当かどうかは分かりませんが、確かにカブール氏の隣の妹の家は豪邸という形容に恥じない立派な家です。制服を着た門番もしっかり雇っています。
隣同士に住んでいても絶対に口をきかないこの兄妹。口をきかないばかりか、カブール氏はほうぼうで彼女の悪口を言いふらしております。
「Koki。アンタはインドネシアにいるが、選挙権はあるのか? もし選挙権があったとしても絶対あいつ(つまり妹)には入れるな!!」と。
彼から聞いたのは、彼女やペアーを組む候補者がいかにアクドイかということ。「誰それから金をいくらもらい、その見返りに彼を消防署を作るリーダーにする・・・・」、「あそこの空き地は県が管理しているが、奴が副知事になったら県営住宅を建てるそうだ。献金の多さで発注業者を決めるぞ!!」。
これも一種の「ネガティブソーシャル」か!?とインドネシアの村で実感したのであります。
この種の噂、ポスター、立候補者の演劇。にぎやかなのはそれだけではありません。驚いたのは、候補者のTシャツを着て暴走行為をする輩がいることです。
普段は渋滞が起こらないような場所でノロノロ運転が始まったため、何事かと思いきや、男女100人くらいのバイク集団が幹線道路で蛇行運転をしているではありませんか。
写真は選挙キャンペーンのものではありませんが、こういう人たちが候補者の顔写真が印刷されたTシャツを身に着け、集団で幹線道路を蛇行運転しているのです。
どうやらこれも選挙キャンペーンの一つで、候補者からいくらかお金をもらってこういったことをしているようです。絶対にこれを日本でやったら逆効果でしょう。
いずれにしても、各候補者にとっては命がけのキャンペーン。絶対に負けられないのです。
負けられない・・・・。
そうなのです。そのため、以前この「紛糾する村長選」の章でもお話しした通り、Pati県知事選でもまた県知事がしばらく決まらない事態が続きました。
相棒のイカサンがPanjunan村の選挙管理委員をしていたのですが、彼の話によると当選した候補者に何らかの選挙違反の疑いがあり、今回の投票は無効になったとのこと。再投票は3か月後・・・・。
結局今ではPatiの県知事と副県知事は決まり、平和で静かな街に戻りました。
Luboyo村からPanjunan村へ引っ越しをしたため、その後私はカブール氏とは会っていないのですが、少なくとも妹が落選したので、せいせいしているのではないでしょうか。最後に彼と会ったのは、彼が家のリフォームをしている時でした。
芝生の庭をコンクリート敷きにし、立派な門を作る予定で、作業員に細かく指示を出していました。妹が住む家との境界の塀も高くして、アリンコ一匹自分の敷地には入れないという意気込みを強く感じました。
彼女が6ペアーの候補中、何番で落選したかはわかりません。彼女のペアーが当選できなかった原因はいろいろあったのでしょう。しかし、カブール氏のあの執念が実ったことは事実です。そして意外と彼のネガティブキャンペーン、実は相当効いたのかもしれないと少し考えたのであります。ソーシャルって怖いですよ。
カブール氏の家へお邪魔するとたいがいこの料理をいただきました。Swikee(スウィキー)というカエル料理です。写真がぶれてしまいすいません。この料理、絶品です。
Sampai Jumpa Lagi,
Koki