2012.11.07
インドネシア中部ジャワ州のPatiには広大なサトウキビ畑が点在しています。
サトウキビというのはものすごく背丈が高くなります。たぶん3メートル以上あるのではないかと思います。
4月頃になると、どこの畑でもサトウキビを刈り取る作業が始まります。刈り取られたサトウキビはトラックが回収しに来て、Patiのはずれにある砂糖精製工場に持っていかれます。そのため、この時期はサトウキビを満載したトラックが極端に多くなります。
この時期のPatiの風物詩でもあります。
ところでこのサトウキビ、おそらく日本では九州以南がメインの栽培地だと思いますが、「サトウキビ刈り取り機」というものがあります。どのくらいのサトウキビ農家がこれを導入しているかわかりませんが、あんな長いものを刈るのであればこういったマシンを利用するのはある程度想像できます。
反対にこれを人手でやろうとすると、どのくらい人手がかかるか・・・・・。
ところが、Patiのサトウキビ畑では全て人手で行っています。こういったマシンを導入し刈り取りを行っている風景をいまだ見たことがありません。
朝早くから大勢の人がサトウキビ畑に入り、鎌で刈り取ってゆきます。4月といえばまだ雨期の為、サトウキビ畑はぬかるんでいます。その中をみんな裸足で入ってゆき、黙々と作業を行います。
通常我々日本人の考えですと、こういった作業は人手で行うよりも、機械化をして人手を減らしたほうが効率的と考えます。作業時間も短縮できますし、作業人員を格段に減らすことが出来ます。それによって初期費用はかかるものの、長い目で見れば機械を導入することにより、大幅なコストダウンにつながるはずです。
例えば先日、日経新聞で見た記事があります。牛丼チェーン店が「丼に盛るごはんの重さをインプットすれば、自動で丼にごはんを盛る装置」を導入するというものです。
あくまでも私の想像ですが、この装置を導入することにより、丼に盛る重さの正確さ以外で、店員の作業工数が減少し、それに伴い数秒レベルで作業時間が短縮できるというメリットもあるはずです。
初期コストやメンテナンス費用等を考慮したとしても、この装置を導入することにより結果的にコスト削減につながることは想像できます。
他にもこのような例は至る所で見受けられます。日本では。
中部ジャワの州都スマランに、以前この章で紹介をした、弊社がメインで取引をしている乙仲業者がいます。この乙仲業者は中古重機の輸入ライセンスを保有している会社です。彼と会う機会があり、聞いてみました。
「Patiのサトウキビの刈り取りは人手で行っていますが、それをマシンでやったらどうなんでしょう? 中古でこういったマシンは日本を始めいろいろなところにあるはずです。こういったマシンを貴社で輸入できないんですか?」と。
サトウキビの刈り取り作業にビジネスチャンスがあるのであれば、検討したいと思ったのです。
この乙仲業者の社長曰く「う~ん。たぶん輸入は出来ないんじゃないかな?」と。
彼はショベルカーも輸入していました。こういったショベルカーが輸入できるのであれば、当然サトウキビ刈り取りマシンも輸入するのに問題ないと思ったのです。理由を聞いてみたところ、このようなものでした。
「ショベルカーを使用するのは効率を高めるという目的以外でも、それが“人手では出来ない作業だから”という理由もある。ところが、サトウキビの刈り取りで機械を使用するのは確かに効率的ではあるが、この作業は人手でもできる。こういった人手でも出来るものに対し、あえて機械を使うというのは許可されない場合が多い。しかも中古であれば尚更・・・・」とのこと。
Patiでサトウキビの刈り取り風景を見れば、一つの畑で多くの人が作業をしていることがすぐにわかります。しかもそれが多くの場所に点在しているわけです。つまり膨大な人がこのサトウキビ刈り取りに従事していることになります。
そこで考えます。もしサトウキビ刈り取りマシンが全ての畑に導入されたら? そしてそれらが彼らの仕事を奪うことにつながれば・・・・。
私が学生時代、何かの試験でこのようなお題が出されました。
「人類が発展してゆく中で、どんどん機械化が進展してゆく。それに伴い様々な弊害が出てくると予想されるが、その弊害と、それに対する政治、もしくは法律が果たす役割を述べよ」といった内容の物でした。
私は解答用紙に下記のような内容を記載しました。
「弊害は、機械化されることにより人がするべき仕事が少なくなり、職が無い人が増え、それに伴い社会は安定性を欠くことになる。 それに対して“機械を使用してはいけない”という法律を作れば、その弊害をなくすことが出来る」と。
コーヒーから見える国の歴史があります。サトウキビから見える国の政策があります。いろいろな切り口から、インドネシアという国をこれからも見てゆきたいと思います。
サトウキビ畑を背景に写真を撮りました。
Samapi Jumpa Lagi,
Koki